いつでも眠い

夢の記録。夢なので乱文で、こっ恥ずかしいです

麺類を食べにいく夢

 

 讃岐うどんか、山梨名物のホウトウを食べにいこう、という話になった。私が軽自動車を運転し、後部座席に座る母と兄が窓から店を探す。石垣やガジュマルの生垣で舗装され、折り重なった細い坂道をくねくねと運転する。カーブも細い道も得意なので、さして問題はない。カラリとした青空の下で、昼食をとる店を探した。沖縄風の石塀の隙間からハイビスカスが顔をのぞかせる南国風の道を進むと、蕎麦屋があったのでそこで食べることになった。

 

 その坂の一番てっぺんに、マツエクとエステのお店があった。そこの店長をしているお姉さんと私は非常に仲が良かったため、昼食後の空き時間に寄ることにした。そのお店は古民家風の変わった造りで、人気があるためにその時も中には多くの若い女の子が順番を待っていた。

 気持ちよくエステをして、帰り際にいつも通り支払をしようと思って財布をみると、お金がまったく入っていなかった。困ったなあ、とは思ったものの、いや~でも常連だし信用あるはずだから大丈夫でしょ、と思い切って、「お金ないので次回にツけておいてもらってもいいですか~」と笑ってごまかした。お姉さんは、もの凄い怖い顔をしたので、思わずヒッと身じろいでしまった。じゃあまた来ますので~次回に~~、と逃げるように店を去った。すっかり雨が降りそうな気配で、外は暗くなっている。

 天候を気にした兄と母が、「車、早くだして~」と遠くから私を呼んでいた。悪天候で車を運転するのは嫌なので、急いで車を飛ばして帰った。

 

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注:夢に出てきた店は、行きつけのエステ店ではない

注:運転は普段しない

 

金払えよって話だよね!!

 

 

金髪の美女が出てくる夢

 

 ゴールデンウィーク中。家族とでかける日、駅の外から大きな声援が聞こえた。騒がしさにつられて、そちらを見てみると、駅の目の前に明治神宮か甲子園かと思うような大きな球場があり、そこで高校野球の試合が行われているようだった。観客席は保護者や高校生で満杯である。対戦校同士、応援用のピンクと青のきらきらしたスティックバルーンをリズムよく叩きながら、選手の名前を叫んで観戦してる。楽しそうだな~と思って、じっと駅から眺めていた。

 しばらく見ていると、どこからか、まるでスパイかCIAのような、金髪のグラマラスな外国人女性が現れた。細縁の眼鏡が良く似合う知的な雰囲気の彼女は、物の良さそうな白いワイシャツを着ていたが、胸部分がはちきれそうだった。

 

「いつまで経ってもいらっしゃらないので、こちらから迎えに来ました。待っておられますので、早く行きますよ」

 

 問答無用とでもいうような口調に、私はその後をついて行った。私はどうやら誰かに狙われているようだった。彼女は誰かの命令によって私の護衛を任されているらしい。駅をでて、アパートの階段をあがった。土足のまま、一番手前の部屋に入るように促された。玄関はなく、四畳ほどしかない和室に、ところせましと本が積み重ねられていた。多くは少年漫画だった。気になった本を手に取りながら、思わず彼女に訊ねた。

 

「なんでこんなにマンガがあるんですか?誰の趣味ですか」

「会長のご意見です。ここで過ごさざるを得ない場合もあるので、せめて暇つぶしに、と」

 

 つまりは、敵に追われた際に逃げる部屋のひとつであるらしかった。それ以上聞く隙もなく、彼女は再び歩き出した。四畳の部屋のとなりに、フローリングの細い部屋があり、そこを通って外に出た。アパートの近くには、若者向けの原宿系の服屋があった。このままの服ではバレてしまうから好きな服を買え、と彼女は言った。原宿系なんて着たことない・・・と戸惑いながら、無難に、短い黒のレザースカートと、大きめの淡いピンクのトレーナー、パープルのインヒールスニーカー、白の靴下を買った。かばんは、リュックにしようかトートバックにしようか悩んだ結果、少し値段の高いトートバックの方を買った。逃亡のためとはいえ、こんな高い店で買ってもらえるなんて嬉しい、と内心小躍りした。

 

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原宿系っていうか、MILKみたいなブランドの服ってわりと高いので、全然趣味ではないけど内心嬉しかった。

 

 

好きな男の子に彼女ができる話

 

 3年ほど前に、美少年風の童顔で可愛い、私の好みド真ん中の男の子と友達になった。私は彼と非常に仲が良く、もう一人の女の子も加えていつも3人で行動していた。私は男の子のことがずっと気になっていたものの、彼にずっと恋人がいなかったこともあり、たいして深く考えていなかった。しかし、顔も良くて雰囲気もフェミニン、実際に誰にでも優しく誠実な彼に今まで彼女がいなかったことの方がおかしく、やはり陰では非常にモテていた。

 ある時彼は、女子校に通う一人の女の子からラブレターを貰った。実は彼自身そういったことは初めてであり、浮かれたように喜んだ。

「みてよー!こんなの貰っちゃったんだよ!」

 一目で一生懸命書いたとわかる可愛い手紙を私に見せびらかした。まさかこんなふうに彼が誰かのものになるなんて思ってもおらず、思いのほかショックを受ける自分にびっくりする。気楽に構えすぎていたせいで、私は3年もの時間のなかで、彼に対して何もアクションを起こしてなかったのだった。

 彼は本当にうれしそうだった。いい子そうでしょ、ねえどう思う?と弾んだ声で私にたずねる。そんなこと私に聞かないでよ!とも思ったがもちろん、無視したり、ましてや彼女を悪くなど言えるはずもない。文面からも可愛らしい人柄が伝わってきたので、おどけたように彼の肩をつついた。

「え~、いい子そうじゃ~ん。よかったねー!わたしの彼女にしちゃいたい~!」

 やめてよね~、俺の可愛い彼女、あげないからねー!と彼もふざけた。

 自分が彼に対して何も行動しなかったことは悔やんでも悔やみきれないが、もうどうすることもできない。彼のことをこんなに好きだったと、こんなことをきっかけに気付いても遅かった。でも、そんな気持ちとは裏腹に、思いのほか焦ってはいなかった。友達と彼女ではまったくの別物なのに、やはり仲の良さでは私の方が上だ、という気持ちがあった。しかし、彼は他人のものになってしまった。

 そういえば、彼女のラブレターには色々なイラストが描かれていた。一世一代の手紙に描くのだから、絵には自信があるのだろうが、殊の外、その絵が稚拙なことに気が付いた。ふぅん…と眺めていると、手紙の字も、女性としてはたどたどしく幼い部類なことに気が付いた。

 そうやって彼女の劣った部分を無意識に探し出していたが、彼女の手紙には、転校してきたばかりであることや、通学中に一目惚れしたこと、こんなに人を好きになるのは初めてであることなどが一生懸命に書かれていた。やはり真面目な雰囲気が伝わってくるので、どうにも彼女のことを心から悪く思えないのだった。それに、彼がこの女の子のことを好きである以上、私が嫉妬しても意味がなかった。

 

 彼は、坂を上った先にある「ポプリ荘」という学生寮に住んでいた。そういえば、彼がいつか欲しいと言っていたものが手に入った。私は外出するときはいつもお洒落なファッションと隙のないメイクをするものの、彼に会うと思うと、なんだかわざわざ着替えるのが億劫になった。まあアイツだからいいかと、部屋着にノーメイクのまま気軽に外に出て、彼の寮まで歩いた。彼にあげるものをタコ壺に入れて小脇に抱えながら、傾斜の急な坂をサンダルでのぼっていると、他の大学の学生寮の男の子達と何度も遭遇した。しまった、やっぱりちゃんと可愛い恰好すればよかった!と後悔するのだが、とにかく彼に渡してあげなくちゃ、と歩きを速めた。

 ポプリ荘の門前に着いて、彼を呼び出そうとiPhoneのアドレス帳を開いた。いや、LINEのほうがいいかも、と画面をいじっていると、ふいに、なんだか小恥ずかしいような、不愉快なような、なんとも言えない気持ちになってしまった。せっかく来たのに、そのまま何も言わずに、来た道を引き返して、さっさと家に帰ってしまった。

 家に帰ると、何かから避難してきた親子が家のリビングにいて、親が困ったような顔をしていた。

 

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男の子は、リボーンのバジル君と、黒子のバスケの桜井君に似ていた。本当に好みのタイプだったけど、当たり前だけど現実にはあんな人いないと思うと悲しい

 

 

 

 

大学の友人と付き合う夢

 

 大学2年生の頃に私のことを好きだと言っていた友人・O君と、今更ながら付き合うことになった。自室の青色のベッドの上で初々しくイチャつく。年齢も年齢なので、心配した親がお茶菓子を持ってくるついでに、水色の袋に入ったコンドームを机の上に置いた。

 

「今日はヤらないから、大丈夫!」

 

 堂々と宣言すると、親は苦笑いして出て行った。一方的にやらないと言ったけれど、彼はやっぱりやりたいだろうか?と思い直して訊ねると、「いや、今日は別にいいよ」とOは笑う。とりあえず付き合いたてのカップルらしく、ベッドに転がりながら、色々な話をして過ごしていた。

 

 のんびりしているうちに、ふいに、Oが以前冗談で「××の膝枕で耳かきしてほしい」と言っていたことを思い出した。膝枕やろっか~と提案すると、「また今度でいいや」と苦笑される。私自身は、いい提案じゃん!と思っていたので、少ししょんぼりした。

 

「良いワイン持ってきたんだ、飲もうよ」

 

 Oの提案に、やったー!昼間からワインなんて最高!と喜ぶと、彼は笑いながら、床に置いておいた専用のクーラーボックスからワインを取り出した。私はそのボトルにギョッとした。

 

「それって、1920年のシャトー・マルゴー!?」

「そうだよ。もしかして嫌いだった?」

「嫌いとかじゃなくて、だって、シャトー・マルゴーの古いヴィンテージっていったら、数百万じゃん・・・!」

「うん、でも別にどうって事ないから大丈夫だよ~。それよりも、喜んでほしくってさ~」

 

 こんな桁違いの高級ワインなんて、どうして一介の大学生が買えるんだろうか・・・と不思議に思いながら、しげしげとラベルを見ていた。Oは何食わぬ顔で、青色のプラスチックケースから、ワイングラスを取り出した。グラスの底がほんのり青色に染まっている。グラス全体に、緻密で華やかなデザインが深くカットされている。ところどころに金彩が施され、どうみてもアンティークの高級品だった。一瞬、江戸切子のワイングラスかと思ったが、よくよく手に取って見てみると、明らかに高級ブランド「バカラ」のワイングラスである。びっくりして、思わず彼の顔を見たが、別段自慢げでもない。さらに驚いたのは、グラスの底に、薄くヒビが入っていたことである。

 

「ちょっと、これ、ヒビ入ってるよ!?」

 

 Oはちょっと身を乗り出して破損を確認すると、ああそう、と言っただけで、予備のグラスを取り出した。

 

「え、これって高いグラスじゃないの!?バカラだよね?」

「あ~うん。でもまあ、まだほかにもたくさん持ってるから大丈夫」

 

 いやいや、大丈夫じゃないだろう!としばらく気にしていたが、O自身は本当にどうとも思っていないようだったので、私も考えるのをやめた。

 

 ともあれ、こんなに高級なワイングラスをいくつも持っているだなんて、自給の高いバイトでもしているのかしら、と思ったが、たしかOのバイトは塾講師だったはずである。塾講ってこんなに稼げるものかな~、もしかしたらグラスコレクターだったりして。そうだとしたら、大したものは買えないけど、誕生日に何かお洒落なワイングラスでもあげようかな~とワインを飲みながら、思考をめぐらす。そういえば私、Oの誕生日を知らなかったんだった。彼女にあるまじきことである。さりげなく誕生日を聞いたら、ちょうど3か月後だった。

 

 Oはこの後、撮影があるそうで、私もそのまま見学についていくことになった。現場では、日清食品のラーメンのCMを撮るらしく、すでに機材や衣装が準備されていた。

 

 待っている間に、用意してあったOのプロフィールを見ると、出身地の横に父親の職業が書いてあった。洗剤の銘柄である「ダウニー(P&Gジャパン)」とだけ記されていた。なんだろう、ダウニーの責任者か何かかしら?もしかして、ダウニーって子会社として独立したっけ?そこの社長の息子だからお金持ちなのかな?

 

 ぐるぐる考えていたが、兎に角、こんな歳からお金に糸目をつけないのは裕福といえども良くない、金銭感覚も釣り合わないし直してもらおう、と思いつつも、このままどうにか結婚して楽な生活送りたいな~などと下心を出していた。

 

 同じ撮影現場で、もう1つCMを撮っていた。ハリーポッターの主要キャストが総出演する、壮大なCMである。大きな可動式の水槽で人口的に、激しい川の流れを再現している。水深は非常に深く、水底には大きな岩をいくつか設置して、場所によって水の流れや速さを変えるという手の込んだものだった。

 

 そこに、小人風の真っ赤な衣装を着た、ルーナ・ラブグッド役のイヴァン・リンチがやって来た。他の女優も含め、3人で、身体よりもはるかに大きな銀製のスプーンを担ぎ運ぶシーンのようで、川の激しい流れに逆らえず、溺れる演技をしていた。完全に溺れて底に沈む場面に差し掛かると、水面には、漫画の描写のような、大きな泡がブクブクと浮かび上がった。水面近くに用意してあったエアーポンプをフル稼働させて演出しているようであった。ファンタジーらしく、スタッフがシャボン玉を吹かせて、水泡の名残を表現していた。

 

 酸素ボンベもなしに長時間の水に潜らなきゃいけないなんて、さぞかし苦しいだろうに、難なく溺れる演技をする女優の根性に圧倒された。すごいな~、私だったら絶対にできないや~なんてぼんやりと考えた。

 

 暇そうに見えたのか、ハリーポッター陣のCM監督に、「白いモナカアイスを失くしてしまったから、探してほしい」と頼まれた。他のスタッフや俳優陣の邪魔にならないように、撮影休憩の合間に、水槽の底を目を凝らしながら眺めていると、それらしい白い、ふやけたものが見えた。私は潜れないので、手の空いているスタッフに声をかけて、取ってもらった。

 

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注:実際、O君には以前告白されたが別に特別仲がいいわけではない

注:シャトー・マルゴー1920年産のヴィンテージはない

注:私はワインが飲めない

 

夢に出てきたバカラを調べたら、当たり前だけどまったく夢と同じものはなかった~!一番似てるのは、バカラのシリーズの中で、デザインだとアンペラトール、カッティングと重厚さはアンタジブル・スピンっていうのだった

 

 

カフェの夢

 今日の昼寝で見た夢。

 

 友人と2人で、都内のお洒落なカフェに行った。豆カレーの有名なお店で、細長い小さなビルの上階のテナントを借りている。芸能人もよく食べにくるそうで、昼過ぎなのに長蛇の列だった。1時間近く並んで、ようやく席に案内された。一番奥の席で、二人掛けのテーブルが5つほどの、狭い店である。評判の豆カレーを注文し、食べ終わると、後ろにまだ並ぶ人がいたので早々に店を出た。出口は入り口の反対側で、階段を下りなければならない。

 

 階段を下りる途中の3階で、小さな写真展(個展)が開かれていた。思わず覗いてみると、山や動物、空など、自然の写真がほとんどであり、心地よさげな写真に私は心打たれ、じっくりと写真を眺めていた。友人はあまり写真自体に興味はなさそうだったが、部屋の中央の動物の赤ちゃんとの触れ合いコーナーで足を止め、遊んでいるようだった。

 

 写真を眺めながら、思わず「ほんとうに凄い」と呟くと、後ろから「ありがとうございます」と低く快活な声がした。びっくりして振り返ると、この古典の主催者である写真家がにっこりと立っていた。彼は背が高く身体は絞られて無駄な肉はなかった。よく焼けた小麦色の肌に、高山特有の強い紫外線で鼻の頭と頬が黒ずみ、四肢や顔のあちことに傷痕があった。しかし、人懐こい笑顔の眩しい、太陽のような人だった。写真に夢中で、誰の個展か確認していなかったのだが、実は有名な登山家が趣味で撮った写真が巷で評判となり、開催した写真展だったのだ。

 

 彼のことはもちろん私も知っていた。むしろ、ファンと言っても過言ではなく、

彼の著書はどれも好んで読んでいた。 

 

「うわあ、○○さんの写真展だったんですね!実は、○○さんの個展だと知らないまま、階段から見えた写真に惹かれてフラフラ入ったんですけど・・・どの写真も本当に素敵で、思わず見入ってしまいました!」

「ほんと?そういってもらえると嬉しいなあ」

 

 ニカッと笑うと、白い歯がのぞいた。熱に浮かれたように調子良く喋り続ける。

 

「あの、私○○さんの大ファンで、本も全部読みました!」 

「え、うそ!うわあ、そういう言葉、あんまり聞いたことないから嬉しいな~~!ほんと、そんなに言ってもらえて光栄です。ありがとうね」

 

 眩しい笑顔と 社交辞令にも浮かれてしまう。

 

 この登山家は、数年前にエベレストの単独登頂失敗で、右腕と左脚を失っていた。不謹慎ながら、その事実がふいに気になってしまい、彼の半袖、半ズボンから伸びる手足をチラリと見てしまった。しかし、義足のつなぎ目などはうまく隠れていて、傍目から見てもよくわからなかった。大変だっただろうな、と思いつつも、その大怪我をも乗り越える精神力と努力を、私は日ごろから尊敬していたのだった。好奇心で身体を見たことを恥じながら、他にも色々な写真を見ていると、偶然、彼の奥さんが様子見に会場を訪れたのと遭遇した。

 

「わあ、盛況ね~~!」

 

 とても可愛らしい、ショートカットの似合う、笑顔の魅力的な女性だった。彼女は普段メディアに出ないので、偶然にせよ滅多に見れないことだった。

 

 へえ~、彼の登山やリハビリを懸命に支えていた奥さんって、あんなに華奢で可愛らしい人なんだ~。お似合いだな~!と眺めていると、ふいに背中を 叩かれた。振り向くと、外国人風の金髪の女性と、日本人の中年の女性が立っていて、こっちへ来るように手招きされた。中年女性は、かすかに見覚えがあるように感じた。不思議に思いつつも、招かれるままに部屋の隅に行くと、突然金髪の女性が私の首筋に顔をうずめたのだった。

 

 え!?と思い、抵抗しようと身を捩ったが、思ったよりも強い力で抑えつけられていたらしく、身動きが出来ない。私がこのとき一番気にしていたのは、こんな状況に陥ったことよりも、先程カフェで食べたカレーの匂いが、おそらく髪や服にもついていることであった。

 

「カ、カレーの匂いが…!あ、あの……!!!」

 

 弱々しく主張したが、女性たちには取り合ってもらえなかった。しばらく首筋をかがれたあと、ようやく押さえつけられていた手が離れた。

 

「この子は、大丈夫」

 

 白人の女性は流暢な日本語で、そう言いきった。まったく状況が掴めないまま、どういうことですか、と訳を訊ねると、傍らに立っていた中年女性が口を開いた。

 

「私たちは、新しいお嫁さんを探しているの。実は、あの子があの女に騙されているんじゃないかと思っているの」

 

 白人女性は、人の首筋の匂いを嗅ぐと、その人間の本質がわかるようだった。突拍子もない発言にギョッとして、思わず遠く離れたところにいる彼と奥さんを眺めた。和気藹々と、仲良さげに話す二人は、どう見てもおしどり夫婦だった。彼女たちの言うような、夫を騙す悪女には見えなかった。

 

「勘違いとかじゃないんですか。○○さんのエッセーを読みましたけど、奥さんがずいぶん闘病中もリハビリも支えてあげてたみたいじゃないですか。そんな人が、騙すなんて・・・」

 

 中年女性は、違うのよ、と苛々した面持ちで首を振った。

 

「私もそう思って一緒に何年も生活していたんだけど、あの子の登山中に、あの女、浮気をしていたみたいなの。新しい男との生活にはあの子が邪魔みたいだったのよ。そしてあの滑落事故が起きて、運悪くあの脚の切断手術をした医者が、その浮気相手だったのよ。詳しい説明もないまま、登山家として再起できないような手術をされたの。私達は、あの女と浮気相手の二人が企んで、あの子を山に登れないような身体にしたことに、その時気付いんだけど・・・」

 

 私は、その衝撃的な話を聞いているうちに、この女性があの登山家の母親であることに気付いたのだった。

 

 こんな安っぽいメロドラマみたいな話があるのだろうかと、もう1度遠くで楽しげに笑う奥さんを横目で眺めたが、どうにも、今聞いた話と彼女のイメージがつながらない。本当だろうか。

 

「だから、あの子を支えてくれる新しいお嫁さん候補を探しているの。あなた、なってくれない?」

 

 真剣な顔で提案されたものの、どうしていいのかわからず、大げさに手を振った。

 

「そんな、できません。○○さんにとって、彼女は大切な人なんです。そんな、無理です」

 

 

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ここで起きた。

憧れの人との夢

2014.05.09.

 

 私の住む街・表参道には、いつも女学生達の憧れの君達がいた。皆、遠巻きにキャーキャー言って騒いでいた。彼らのことなど、私達は何も知らないのに、不思議なほど魅力的で、一目姿を見るだけでも心が浮き立った。彼らは私達に構うことはなく、目が合うことなんて決してないのに、誰もが虜になる不思議な集団だった。しかし、不思議なことに、私達は彼らに必要以上に近寄ろうとしなかった。遠くにいるべきだと、誰もが薄々感じていた。理由は、その時はわからなかった。


 あるとき、私自身に嫌な出来事があり、不機嫌に街を歩いていると、いつものように、女子生徒達が集まっているのが見えた。その視線の先には当然、『憧れの君』達がいた。私も集団の後方からぼんやりと眺めていると、突然優しい声がした。

 

 「こっちにおいで」

 

 そっと、手が引かれたような気がした。え、と戸惑う間もなく、気付けば、『向こう側』に行ってしまった。ハッと気づいたときには、一番私の憧れている人の腕のなかにいて、周りにいたはずの少女たちは消えていた。サラサラした黒髪に、少しつり気味の目のその『憧れの人』は、思っていたよりも背が高かった。こんなに近づいたことがないから、わからなかった。夢見心地のまま顔を見上げると、彼はにっこりと柔らかく微笑んだ。

 

 それがあまりにも理想的で、私の好みど真ん中だったので、どぎまぎしながら条件反射的に微笑み返した。なんの躊躇もなく、柔らかくキスされたので、慣れてないはずもないのに、ウワァ~~~!!と思わず目をつぶった。キスを受けると、急に心が落ち着いてきた。なぜ私が有象無象の女の子の中から選ばれたんだろう。不思議に思っていると、抱きしめられたまま、再びにっこりと微笑まれた。

 

「もう、帰れないよ」

 

 意味はよくわからないまま、別に彼といられるのなら帰れなくてもいいや、とぼんやり考えていると、そっと頭を撫でられた。

 

 困ったなあ、帰れないのか~。連れてこられちゃったけど、ずっとこの生活ができるなら幸せだな~、な~んて。本当は困っちゃうんだけど。

 

 困ってもいないのに悩むフリをして幸せに浸る私は、異常なほどうかれていた。されるがままにしていると、彼は急に面白そうな表情で、パッと私の顔を覗き込んだ。

 

「ねえ、忘れてる?」

「え?」

「xxちゃんは、自分から『こっち』に来たんだよ」

 

 囁くようにそう言った彼を、ぼんやりと見つめた。突然の話で呆けた顔をする私を見て、にっこりと笑う。

 

 『こっち』に、自分から来たって、いったい、なんだ。『こっち』?『こっち』ってなに?

 

 理解できずに固まっている私をもう1度優しく抱き寄せて、そうなんだよ、と、あくまでも穏やかな声でつぶやいた。嬉しそうな顔すら浮かべて、まわした腕でポンポンと、赤子をあやすように、私の背中をたたいた。

 

「君はさ、『あっち側』が嫌になって、それで『こっち』に飛び込んだ来てんだよ。僕は君が来てくれて、嬉しいけどさ~」

「エッ・・・!!!」

 

 素っ頓狂な声が喉奥から飛び出した。ようやく実感したときには、すでに遅かった。『こっち』側、つまり、あの世に来てしまったのだった。もう戻れないということに気付いたものの、私にはどうすることもできないように思えた。色々と言いたい事が、小さな頭のなかで濁流のように渦巻いたが、何一つとして言葉には出てこなかった。固まった私を、ぎゅっと抱きしめる。

 

「ごめんね。だからもう、あっちには帰れないんだ」

 

 謝るというよりは、今にも歌いだしそうな調子で言われたせいか、この状況が常識はずれなせいか、私は、そうなのか、とすっかり納得してしまった。

 

「だから、僕と楽しもうか」

 

 こくりと頷くと、また楽しげにキスされた。こんなにも心地よいのはこの世の人じゃないからなのかもしれない。いや、実際そうなんだろう。柔らかなキスは、身体が芯から蕩けるようだった。唇もやわらかくて、その形も、厚みも、すべてが理想的だった。

 

 これは私だけの問題であるようだった。けしかけて一歩踏み出させたのが彼であるにせよ、彼にとっては、私が『こっち』に来てしまったことから目を背けることも、それによって消えてしまうことも、何ら関係ないようであった。私が消えても、彼は何食わぬ顔で今まで通りの生活をするし、雨が降ったときほどの影響もないらしかった。私自身の問題なのである。

 

 『こっち』側に行ってしまった私は、いつか近いうちに死ななければいけない。私は、あの世とこの世の狭間にいる中途半端な存在だった。どうにかしなければと、私は彼と別れ、全てのことを知り永遠の時間を持つ人魚のもとへ相談に行った。辺境の地に住む人魚は、深い海を越えた洞窟の奥にいた。相談者は他にもいた。

 

 私がすべてを話す間、人魚はじっと黙っていた。聞き終えると、フン、と鼻で笑った。

 

「そんなことが。なんて自分勝手で愚かな悩みなの!」

 

 人魚は呆れたようだったが、私は懸命に頼み込んだ。死が恐ろしいのではなく、彼と離れることが耐え難かったのだ。どうにか共に生きていきたいと懇願した。彼が私をどう思っているかは明らかだったが、私は彼が好きだった。

 

 彼とともに生きるため、と銘打った『あちら』側へ還る願いを叶えるためには、様々な困難を乗り越えなければならなかった。人魚は古くから伝わる術を教えてくれた。そして、どうしてか、その術の段階が進むにつれて、私は次第に彼のことを考えなくなっていった。当初の目的は、それほど重要ではなくなっていた。

 

 ようやく自分の命を取り返せたときに、彼のもとを再び訪れた。今度は『あちら』側の住人として彼に会ったのだ。

 

 彼のもとに着くと、彼の隣には純朴そうな少女が並んでいた。それを見ると、忘れていた心の傷のようなものがチクリと痛んで、胸が苦しかった。けれど、すんなり納得できた。彼は私に一度も見せたことのないような、心から安心しきって幸せそうな笑顔で、やあ、と片手をあげた。私が長い間いなかったこと、ましてや死にかけていたことなど、知らないようであった。自分の心の中にぽっかりと空洞があって、そこに靄がかかったような感覚に、一瞬、私は怯んだ。しかし次には、久しぶり、と言って微笑み返す自分がいた。

 

 その子はだあれ?というような野暮なことは聞かなかったが、彼は察したのか自慢したかったのか、嬉しそうに笑った。

 

「超自然的吸引力っていうのかな。彼女と会った瞬間に、惚れてしまったんだ。運命ってやつだよ」

 

 じゃあ、私は?と、叫んで今更問いたい気もした。しかし本当は、適当な暇つぶし相手で、死のうと死ぬまいと彼にとっては微塵も関係ないくらい、私は彼にとってどうでもいい相手だということは、もちろん初めからわかっていたのだった。

 

 素朴なのが唯一の売り、というふうな、「女」にすらまだなっていない冴えない少女と彼は、二人で顔を見合わせて笑っていた。こんなやつのどこが、と、完全に慕情が断ち切れず、未練がましい嫉妬が僅かにゆらめいた。だが、相手と自分を傷つけてまで感情をぶつけられるほど、私はすでに彼の事を想っていなかったのだった。これが人魚の術のおかげなのかは、今となってはわからなかった。私は、彼の一番になれなかったことはとうに理解して諦めていたが、たとえ一瞬でも、一方的でも、本気で好きだと思えたことは事実であり、ただそれだけでいいと思った。

 

 

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 夢に出てきた理想男子は、黒バスの赤司と、高校のとき憧れていた国語の先生にほんの少し似ていた。

 なんか文字に起こすとむなしい夢なんだけど、わりと見ているときは幸せな気分だった。報われない系の夢は疲れるけどけっこうおもしろい。

 

 

殺人鬼に狙われる夢

 

 

 私達は確実に殺される。犯人は誰を恨んでいるのかもわからない。

 

 地元で連続殺人事件が起きた。犯人の手掛かりも、動機もわからず、捕まりそうもなかった。唯一わかっているのは、殺される直前に、視界で銀色の何かがピカッと光り、それを見た者が5秒以内に殺される、ということだった。

 

 最初に、男の子達が5人殺された。その日、彼らと私は以前通っていた小学校を久しぶりに見に行こうとしていた。自転車で集合したときには、天候はすぐにでも崩れそうだった。空は熱い雲に覆われ、生ぬるい、湿った風が強く吹いていた。土気を含んだ、ムッとした匂い。一瞬、遠くでピカッと光った。雷ではないように思ったが、はっきりと見ていたわけではない。雷かもしれない。誰も深くは考えていなかった。

 

「雨、降り出しそうだな!先行くぞーっ!」

 

 一人がそう叫ぶと、ドッと笑い声が弾けて、みんなで競うように自転車を漕ぎ出した。私もつられて笑いながら、もう、待ってよぉ、と五人の後をそのままゆっくり漕いだ。突然、爆発が起きた。下水道のマンホール。彼らが通った瞬間だった。楽しさが一転、惨劇となった。遠く離れていた私は、その惨状だけを目にすることとなった。

 

  テロなのか、事故なのか。何が起きたのかもわからないまま、この事はちょっとしたニュースとなって終わった。しかし、その事件を機に、地元では次々に不可解な猟奇的殺人事件が起きた。何度も立て続けに事件が発生した後、明らかになったのは、犯人が男である事と、私の通っていた小学校に関係のある人物が狙われること、そして、死ぬ数秒前に不自然に何かが光ること、それが事件スタートの合図となって瞬時に殺されるということだった。地元に限定して事件が起きているのに、犯人は未だ捕まらなかった。

 

 私自身は、誰かを虐めたことも、馬鹿にしたことも、誰かに恨まれたり、妬まれたりするようなことは、けしてないと思っていた。でも、本当にそうだと言えるのか…?自分で、他人を心底傷つけたことがないなんて…?自分で気づかないだけで、ふとした言葉や仕草によって他人は傷つくことがあることは、私もよく知っていた。確実に私が無関係であるとは言い切れないのである。

 

 いつ殺されるかもわからず、戦々恐々としている間でも、私達は生活のうちに幸せを見出すし、喜んだり泣いたりもする。少しずつ、この異常な状況に慣れてゆく自分がいて、連続殺人事件という異分子を含んだまま、私には日常が戻っていくように感じていた。

 

 しかし、ある雨の降る午後、友人のS美がいなくなった。私達は、文字通り、頭が真っ白になった。探し出さなくては…。必死に頭を働かせた。もしかしてと心当たりのある、近所の大きな公園に急いだ。予想通りS美は公園にいたが、遊具の柵に縄で括り付けられ、その向こうに大きな白色のワンボックスカーが見えた。縛られて身動きの取れないS美を轢き殺そうとしてるようだった。一緒に捜索をしていたS美の父親が急いで助けに行き、寸でのところで難を逃れたが、私は膝から崩れて呆けてしまった。やっぱり、私達を殺したいほど憎んでいる奴がいるっていうこの状況は現実なんだ・・・。改めて実感させられると、もう泣くことしかできず、親友のM樹と抱き合って泣いた。そして、こんな状況にもかかわらず、M樹の腕のなかが心地いいと感じている自分に心底嫌気がさした。

 

 そんなある日、ついに私達が殺される番になった。その日はよく晴れた日で、たまたま小学校に関係のあるメンバーと街中で出会い、ブラブラと歩いていたのだった。何事もない日のはずだった。突然、その中の男が、恐る恐るという表情で私に告げた。

 

「実は、あいつが殺したいのは、俺なんだ。俺が一番狙われているんだ」

「え・・・?何をしたの・・・あいつって、誰なの・・・?」

「同級生で・・・虐めてたんだ。俺が主犯格だった。誰もあいつのことを認めてやらなくて。下級生も上級生もグルになって、学校全体で虐めてた・・・」

 

 私はその話を聞くと、その見知らぬ犯人が不憫で仕方なくなった。彼のやったことはけして許されることではないけれど、それくらいしらくなる気持ちは、不思議なことに、わかるような気がした。

 

「やばい!!あいつだ!!!!」

 

 緊張して掠れた声で、鋭く叫んだ。つられて視線の先を見ると、若い男が駆けてくるのが見えた。その場は一瞬で阿鼻叫喚となった。まず、前を歩いていた二人が襲われるのが、スローモーションのように見えた。刺されたかどうかわからず、私達は彼らを助ける余裕もなく、全速力で逃げた。殺される。確実に殺される。頭の中では、限りなく予想できる「死」に絶望していた。犯人が一度も殺人に失敗したことがないのは知っていた。怖い。死にたくない、生きたい。私は振り返ることなく必死に走った。

 

 しかし、走った先は行き止まりで、逃げる場所はなかった。気が動転したまま、咄嗟に、目の前にあった小さな実験施設に逃げ込んだ。真っ暗な狭い部屋の中央に、真っ白なテーブルクロスのかかった机があった。出入りできる扉はたった1つしかない。机の下に転がり隠れた。

 

 こんな所にいたら、気付かれるに決まっているのに…!隠れた瞬間にそう気づいて心底後悔したが、今出て行って犯人に見つかっても…でも…と、まとまらない思考で決めあぐねている間に、犯人がガチャリと戸を開けて入ってきた。犯人が私を探して歩き回る様子を、息を殺してじっと窺った。心臓が口から出そうだ。手汗がひどい。心臓の激しく打つ音が聞こえているかも。もう死ぬ、死にたくない、でも死ぬのかも…。しばらく部屋をせわしなく動いていたが、他を探す気になったのか、男が扉に向かった。そのとき、側にあった何かが、コロン…と転がった。まずい。そう思って頭から血の気がひいたときには、男が机をひっくり返していた。血が滴るナイフを持った男と、目が合った。

 

 男は、まだ20代半ばのようだった。髪は無造作に伸びていて、薄い唇はあかぎれていた。思いのほか整った顔のなかで、これまでの苦労を感じさせる目元だけが浮いている。白いTシャツに青のジャンバーを羽織り、黒のスキニーの裾は、汚れたスニーカーの中に入っていた。返り血は浴びていなかった。男は怒ったような、どうでもいいような、悲しいような、複雑な表情をしていた。もう死ぬんだ、死にたくない、死にたくない、怖い、ああ、なんだか犯人の容姿がイメージと違うなぁ、この人虐められていたんだっけ、ほんとうに可哀想。一瞬のうちに様々な感情が駆け抜けた。たった数秒が、永遠のように感じられた。

 

 私から、犯人ににっこり笑いかけたような気がした。覚えていない。愛しさにも似た不思議な憐憫を彼に感じたのは、記憶にある。男が突然今までと犯行を変えたのが、何によるものなのか、何を企んでいたのかはまったくわからなかったが、私は殺されない代わりに、その男の子供を妊娠したのだった。

 

 その後、先に刺された二人は重傷だったものの、奇跡的に致命傷は避けられたのだと、刑事から聞かされた。もう二度とこの出来事には関わりたくなかったが、当時一緒に事件に巻き込まれた女性のもとへお見舞いに行くこととなった。私についての諸々は周りから聞かされていたのだろう、未だ包帯の取れない姿の病床で、忌々しげに憎しみの籠った目で私を睨んだ。吐き捨てるように言った。

 

「はーあ。あんたはいいね、身体を使って殺されなかったんだ。ちゃっかり孕んじゃってさ。この裏切り者。私も、誘惑するなんて手段使えばよかった」

 

 覚悟はしていたは、実際に言われるとかなり堪えた。なぜ私がここまで言われなければならないのか。私も被害者で、彼女も同じ女性なら、苦しみはわかるはずではないのか。しかし、お腹に新しい命があるせいか、不思議とそれ以上心は荒れなかった。あれだけ怖い思いをして、今も私の体の中で続いているはずなのに不思議な感覚だった。

 

 何も言わずに病院から逃げるように去った。その後の身の振り方もわからず、以前バイトでお世話になった、新聞社に勤める西島秀俊の元へ行き、泣きついた。

 

 

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気持ち悪い夢で疲れた。本当に殺されると思ってこわかった~。