いつでも眠い

夢の記録。夢なので乱文で、こっ恥ずかしいです

殺人鬼に狙われる夢

 

 

 私達は確実に殺される。犯人は誰を恨んでいるのかもわからない。

 

 地元で連続殺人事件が起きた。犯人の手掛かりも、動機もわからず、捕まりそうもなかった。唯一わかっているのは、殺される直前に、視界で銀色の何かがピカッと光り、それを見た者が5秒以内に殺される、ということだった。

 

 最初に、男の子達が5人殺された。その日、彼らと私は以前通っていた小学校を久しぶりに見に行こうとしていた。自転車で集合したときには、天候はすぐにでも崩れそうだった。空は熱い雲に覆われ、生ぬるい、湿った風が強く吹いていた。土気を含んだ、ムッとした匂い。一瞬、遠くでピカッと光った。雷ではないように思ったが、はっきりと見ていたわけではない。雷かもしれない。誰も深くは考えていなかった。

 

「雨、降り出しそうだな!先行くぞーっ!」

 

 一人がそう叫ぶと、ドッと笑い声が弾けて、みんなで競うように自転車を漕ぎ出した。私もつられて笑いながら、もう、待ってよぉ、と五人の後をそのままゆっくり漕いだ。突然、爆発が起きた。下水道のマンホール。彼らが通った瞬間だった。楽しさが一転、惨劇となった。遠く離れていた私は、その惨状だけを目にすることとなった。

 

  テロなのか、事故なのか。何が起きたのかもわからないまま、この事はちょっとしたニュースとなって終わった。しかし、その事件を機に、地元では次々に不可解な猟奇的殺人事件が起きた。何度も立て続けに事件が発生した後、明らかになったのは、犯人が男である事と、私の通っていた小学校に関係のある人物が狙われること、そして、死ぬ数秒前に不自然に何かが光ること、それが事件スタートの合図となって瞬時に殺されるということだった。地元に限定して事件が起きているのに、犯人は未だ捕まらなかった。

 

 私自身は、誰かを虐めたことも、馬鹿にしたことも、誰かに恨まれたり、妬まれたりするようなことは、けしてないと思っていた。でも、本当にそうだと言えるのか…?自分で、他人を心底傷つけたことがないなんて…?自分で気づかないだけで、ふとした言葉や仕草によって他人は傷つくことがあることは、私もよく知っていた。確実に私が無関係であるとは言い切れないのである。

 

 いつ殺されるかもわからず、戦々恐々としている間でも、私達は生活のうちに幸せを見出すし、喜んだり泣いたりもする。少しずつ、この異常な状況に慣れてゆく自分がいて、連続殺人事件という異分子を含んだまま、私には日常が戻っていくように感じていた。

 

 しかし、ある雨の降る午後、友人のS美がいなくなった。私達は、文字通り、頭が真っ白になった。探し出さなくては…。必死に頭を働かせた。もしかしてと心当たりのある、近所の大きな公園に急いだ。予想通りS美は公園にいたが、遊具の柵に縄で括り付けられ、その向こうに大きな白色のワンボックスカーが見えた。縛られて身動きの取れないS美を轢き殺そうとしてるようだった。一緒に捜索をしていたS美の父親が急いで助けに行き、寸でのところで難を逃れたが、私は膝から崩れて呆けてしまった。やっぱり、私達を殺したいほど憎んでいる奴がいるっていうこの状況は現実なんだ・・・。改めて実感させられると、もう泣くことしかできず、親友のM樹と抱き合って泣いた。そして、こんな状況にもかかわらず、M樹の腕のなかが心地いいと感じている自分に心底嫌気がさした。

 

 そんなある日、ついに私達が殺される番になった。その日はよく晴れた日で、たまたま小学校に関係のあるメンバーと街中で出会い、ブラブラと歩いていたのだった。何事もない日のはずだった。突然、その中の男が、恐る恐るという表情で私に告げた。

 

「実は、あいつが殺したいのは、俺なんだ。俺が一番狙われているんだ」

「え・・・?何をしたの・・・あいつって、誰なの・・・?」

「同級生で・・・虐めてたんだ。俺が主犯格だった。誰もあいつのことを認めてやらなくて。下級生も上級生もグルになって、学校全体で虐めてた・・・」

 

 私はその話を聞くと、その見知らぬ犯人が不憫で仕方なくなった。彼のやったことはけして許されることではないけれど、それくらいしらくなる気持ちは、不思議なことに、わかるような気がした。

 

「やばい!!あいつだ!!!!」

 

 緊張して掠れた声で、鋭く叫んだ。つられて視線の先を見ると、若い男が駆けてくるのが見えた。その場は一瞬で阿鼻叫喚となった。まず、前を歩いていた二人が襲われるのが、スローモーションのように見えた。刺されたかどうかわからず、私達は彼らを助ける余裕もなく、全速力で逃げた。殺される。確実に殺される。頭の中では、限りなく予想できる「死」に絶望していた。犯人が一度も殺人に失敗したことがないのは知っていた。怖い。死にたくない、生きたい。私は振り返ることなく必死に走った。

 

 しかし、走った先は行き止まりで、逃げる場所はなかった。気が動転したまま、咄嗟に、目の前にあった小さな実験施設に逃げ込んだ。真っ暗な狭い部屋の中央に、真っ白なテーブルクロスのかかった机があった。出入りできる扉はたった1つしかない。机の下に転がり隠れた。

 

 こんな所にいたら、気付かれるに決まっているのに…!隠れた瞬間にそう気づいて心底後悔したが、今出て行って犯人に見つかっても…でも…と、まとまらない思考で決めあぐねている間に、犯人がガチャリと戸を開けて入ってきた。犯人が私を探して歩き回る様子を、息を殺してじっと窺った。心臓が口から出そうだ。手汗がひどい。心臓の激しく打つ音が聞こえているかも。もう死ぬ、死にたくない、でも死ぬのかも…。しばらく部屋をせわしなく動いていたが、他を探す気になったのか、男が扉に向かった。そのとき、側にあった何かが、コロン…と転がった。まずい。そう思って頭から血の気がひいたときには、男が机をひっくり返していた。血が滴るナイフを持った男と、目が合った。

 

 男は、まだ20代半ばのようだった。髪は無造作に伸びていて、薄い唇はあかぎれていた。思いのほか整った顔のなかで、これまでの苦労を感じさせる目元だけが浮いている。白いTシャツに青のジャンバーを羽織り、黒のスキニーの裾は、汚れたスニーカーの中に入っていた。返り血は浴びていなかった。男は怒ったような、どうでもいいような、悲しいような、複雑な表情をしていた。もう死ぬんだ、死にたくない、死にたくない、怖い、ああ、なんだか犯人の容姿がイメージと違うなぁ、この人虐められていたんだっけ、ほんとうに可哀想。一瞬のうちに様々な感情が駆け抜けた。たった数秒が、永遠のように感じられた。

 

 私から、犯人ににっこり笑いかけたような気がした。覚えていない。愛しさにも似た不思議な憐憫を彼に感じたのは、記憶にある。男が突然今までと犯行を変えたのが、何によるものなのか、何を企んでいたのかはまったくわからなかったが、私は殺されない代わりに、その男の子供を妊娠したのだった。

 

 その後、先に刺された二人は重傷だったものの、奇跡的に致命傷は避けられたのだと、刑事から聞かされた。もう二度とこの出来事には関わりたくなかったが、当時一緒に事件に巻き込まれた女性のもとへお見舞いに行くこととなった。私についての諸々は周りから聞かされていたのだろう、未だ包帯の取れない姿の病床で、忌々しげに憎しみの籠った目で私を睨んだ。吐き捨てるように言った。

 

「はーあ。あんたはいいね、身体を使って殺されなかったんだ。ちゃっかり孕んじゃってさ。この裏切り者。私も、誘惑するなんて手段使えばよかった」

 

 覚悟はしていたは、実際に言われるとかなり堪えた。なぜ私がここまで言われなければならないのか。私も被害者で、彼女も同じ女性なら、苦しみはわかるはずではないのか。しかし、お腹に新しい命があるせいか、不思議とそれ以上心は荒れなかった。あれだけ怖い思いをして、今も私の体の中で続いているはずなのに不思議な感覚だった。

 

 何も言わずに病院から逃げるように去った。その後の身の振り方もわからず、以前バイトでお世話になった、新聞社に勤める西島秀俊の元へ行き、泣きついた。

 

 

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気持ち悪い夢で疲れた。本当に殺されると思ってこわかった~。